映画『水曜日が消えた』がブロガーを風刺しているようでゾクッとした
暇つぶしにAmazonプライムで見た映画が何気に面白かった。
タイトルは『水曜日が消えた』。2020年6月に公開され、主演は中村倫也。
概要
まず、タイトルが意味不明で惹かれる。何年も前にバカリズムが『週刊SPA!』で"タイトルから勝手に話を想像して、見るかどうかを判断する"みたいなコラムを連載していたのを思い出した。真似して脳をフル回転させてみたけどまったく想像がつかない。
あきらめてあらすじを読むと、どうやら多重人格(解離性同一性障害)の話らしい。多重人格と言えば、ジキルとハイドのような表と裏の二重人格を描いた物語が多いけど、そのありがちなパターンとは少し違うようだ。
(以下ネタバレを含みます)
あらすじ
主人公は幼いころの事故の後遺症によって、7人の人格が日替わりで現れるようになっていた。朝に起きると人格が切り替わっており、記憶は人格に合わせて再生と停止を繰り返す。
途切れる記憶を繋ぐため、7人の人格は一つのルールを守っていた。それはその日にあった出来事をノートに残し、伝言を付箋にメモすること。記憶のリレーにより、主人公は何とか生活を送っていた。
1人の体を7人の人格が順番にシェアしていると考えてもらえればわかりやすいかもしれない。1人の人格が生きられる曜日は決まっていて、1人の人格は1年の間に僅か52日しか生きられないのである。
性格や趣味は人格ごとにまったくのバラバラだった。月曜は俺様なバンドマン、火曜は几帳面な青年、水曜はスポーツマン、木曜はイラストレーター、金曜は植物の愛好家、土曜はゲームマニア、日曜は釣りバカ。
1人で暮らすには広すぎるはずの一軒家には人格の数だけ椅子が並べられ、それぞれの趣味のモノで家中埋め尽くされていた。
見どころ
物語は火曜の人格から始まる。好き勝手に趣味に生きる他の曜日の人格と比べ、真面目な火曜の人格の役目は主治医から脳の診察を受けること。火曜は週に一度の通院日であり、行きたい図書館はいつも定休日。退屈な火曜日に、火曜の人格である僕(ボク)はうんざりしていた。
ある朝、火曜の僕が目を覚ますとその日はいつもの火曜ではなく、水曜の朝だった。動揺しつつも喜ぶ火曜の僕。今まで行けなかった図書館に行き、女性司書との恋を楽しむ。
しかし、その頃からたびたび脳に異変を感じるようになる。火曜の僕はようやく手にした火曜日以外の生活を続けるため、まわりに異変のことを隠そうとするが、彼の障害を知る女性、一ノ瀬もそんな火曜の僕のことを心配していた。
最初の頃は楽しんでいた火曜の僕だが、やがて、それぞれの人格にはそれぞれに歩んできた人生があり、同じ1人の人間であっても、自分以外の人格の代わりにはなり得ないことに気づく。
そして、ある曜日の人格が自分と同じように他の曜日を生きていると知り、恐怖する。もしかして、次は自分(の人格)が消えるかもしれない。
はたして7人の人格は1人の人格を残して他は全て消えてしまうのか?そのときに残る人格は?そもそも事故が起きる前のオリジナルの人格はどの曜日の人格なのか?物語は急展開していく。
多重人格とブログ
この映画はフィクションであり、多重人格(解離性同一性障害)を患っている人は現実世界にきっと僅かしかいない。ほとんどの人が自分と多重人格は無縁と考えるはずだが、必ずしもブロガーはそうとは言い切れない可能性がある。
なぜならブログを書くという行為自体が、本来の自分とは違う別人格を意図的に作り上げようとしている風に思えてならない。
理由の一つが、匿名性だ。匿名にすることで、本来の自分を隠しながら、別に作った自分を他人に見せることができる。僕自身、普段は恥ずかしくて言えないようなこと、言いにくいこともブログでは平然と書いている。つまり、それは現実の世界では叶えられない欲求を満たすために、ブログの中では別人格を通じてそれを可能にしているのだ。
大袈裟に聞こえるかもしれないが、本来の自分とブログの中の自分がまったく同じ人格と言い切れる人はどれだけいるのだろうか。恐らくそれが言えるのは匿名ではなく、実名で投稿している人だけである。最たる例が裏垢で、本垢と裏垢はまさに現代版のジキルとハイドなのだろう。
ブログをやっている人の中には複数のブログを掛け持ちしている人もいる。ブログごとに別々の趣味やテーマが設定されており、対象となる読者も基本的には異なる。仮に自分にそのつもりはなくても、読者からは別人格に見えているかもしれない。
問題は、上手くコントロールできている間は良いが、別人格に熱中し過ぎるのはリスクがあるように思えた。本来の自分は別人格からも影響を受ける。いつか別人格がトラブルを起こせば、本来の自分の生活を脅かしかねない。本来の自分と別人格のギャップが大きい人ほど反動は大きいだろう。
そんなことを想像していたら、背筋がゾクっした。もう1人の別人格に飲まれないよう、皆さんも気をつけていただきたい。
おわり