冬を待つ秋の歌『The Autumn Song 』
今週のお題「秋の歌」。秋は英語で「autumn」。お題の主旨と少し違うかもしれないけど、以前に秋の歌ではじまる記事を書いたことがあったので、リライトしてお届けします。
ゲレンデマジック
家のクローゼットの奥には大きな板が2枚しまってある。1枚は僕のもので、もう1枚は妻のもの。先日片付けをしているときにそれを見つけて頬が緩んだ。
Autmn Song
ELLEGARDENの『The Autumn Song 』はこんな歌詞で始まる。
Summer time is gone
夏が終わってしまってI miss it so much
さみしいねMy board lies in my garage
僕のボードはガレージで横たわってWaiting for the snowy season
雪の降る季節を待っているAnd again I would slide
そうしたら、また滑るんだ
作詞・作曲 TAKESHI HOSOMI
『The Autumn Song』より
可哀そうなことに僕のボードは1年はおろか、かれこれ10年近く雪の降る季節を待ち続けている。
気付けば上の子が生まれてから、一度もゲレンデに出掛けていない。大切に使っていたはずのボードは近くで見ると少し黄ばんでいた。雪のような白さがカッコよくて買ったボードなのに…。
スノボとゲレンデデビュー
ゲレンデデビューは20歳の学生のときのこと。1年を通してほぼ雪が降らない地域に生まれ、スポーツが苦手な家系に生まれた僕にとってゲレンデは縁のない場所だった。
初めて行ったゲレンデは長野県の白馬にある栂池高原スキー場。横浜駅発のバスツアーに参加したんだったと思う。
男が何かを始めるときの動機なんてだいたい不純なものだ。一緒に行ったのは同じバイト仲間で男女2人ずつの4人組。彼女ナシの男が誘われて断る理由はない。
初めてのスノボはもちろん楽しみだったけど、それより期待したのはゲレンデマジック。ゲレンデでは男も女も3割増しで素敵に見えると聞く。普段ではあり得ないような恋の進展があるかもしれない。淡い期待に胸が高鳴り、下品な妄想で僕の頭は一杯になった。
出発当日、4人一緒にバイト先で食事を済ませ、夜のバスに乗り込む。バスは途中で新宿にある都庁の大型駐車場を経由した。駐車場には何十台ものバスと大勢の若者で溢れている。その雰囲気が余計に僕の胸を高鳴らさせた。
ゲレンデに着くと、今までに見たこともない真っ白な銀世界が広がる。運が良いことに天気は快晴で視界も良好だった。
けれども、肝心なスノボは燦々たる有様でブーツをビンディングにセットするだけでも大苦戦。まったく滑れない初心者の男2人に対し、少しだけ経験があった女の子たちが一から滑り方を教えてくれた。
カッコイイところなんて見せれたわけもないし、翌日は筋肉痛で全身が痛い。それでも初めてのスノボはすごく楽しくて、何度転んでも心だけは弾んだ。
結局のところ、僕が期待したゲレンデマジックは不発に終わる。と、言うか魔法を起こしたのは僕ではなく、もう一人の男の方だった。
その魔法で繋がった糸はゲレンデを去ってからまもなくすると切れてしまうのだが、ゲレンデマジックは噂だけではなかったらしい。
ゲレンデ最高
社会人になると本格的にスノボにハマった。学生時代と違うのは、バスではなく車でゲレンデまで行くようになったこと。
僕の住む静岡では山梨や長野のゲレンデに行く人が多い。ただし、近場の山梨でも片道だけで最低3時間はかかり、長野や更にその先の新潟なら最低5時間は必要となる。今は静岡と山梨を繋ぐ中部横断自動車道が開通したおかげでだいぶ時間が短く済むようになったけど、当時はくねくねした長い下道を辛抱強く進むしかなかった。
それでも1台の車に仲間と乗り合って行くのは楽しかった。運転は眠くてしんどかったし、チェーンの取り付けにはやたら苦戦したけど、すべてが良い思い出だ。途中で寄る食事も、温泉も最高だった。下手なりに本を買って努力もしたこともある。
結婚した今、独身時代と同じようにスノボを楽しむことはできない。でも、子どもたちも大きくなってきたから、そろそろ家族でゲレンデに行きたいと思っている。ブランクがありすぎて、まともに滑れるかはわからないけど。
告白します
実は初めてゲレンデに行ったときの話にはちょっとしたオチがある。
バイトの男友達がゲレンデマジックを起こした相手の女の子は今の僕の妻。
それを聞いて「おいおい」って思う人もいるだろう。でも、これは事実。彼のマジックはすぐ溶けたけど、僕のマジックはすいぶん時間をおいて発動した。
今年の冬、あなたにも気になる人がいたらゲレンデに行くことをお勧めしたい。なぜなら魔法が起きるかもしれないから。
[HQ] Ellegarden - The Autumn Song
また秋の歌でも聴きながら、冬を待ってみようじゃないか。
おわり