はじまりここから

下手の横好きではじめたエッセイ風のブログです。平凡な日々の中で感じたことを少しだけエモく綴っています。ジャンルはニュースや音楽など。

あま酒の味と祖母との思い出

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寒い季節はあま酒が無性に飲みたい。縁日などであま酒の看板を見かけるとついつい足を止めてしまう。身体が冷えたときに飲むあま酒は格別に上手いのだ。先週末は寒さがキツかったので、思わずスーパーでも買ってしまった。とは言え、ずっと昔からあま酒が好きだったわけではなく、歳を取って味覚が変わったのかもしれない。

子どもの頃に祖母がたびたび作っていた酒粕のあま酒。正直あまり惹かれはしなかった。匂いは美味しそうなのに味はクセがあったからだ。酒粕特有の風味が子どもの口には馴染みにくかったのだと思う。今でも酒粕の甘酒より、米麴から作る甘酒の方が好き。味がスッキリしている。自然な甘さがちょうど良い。

祖母とあま酒には思い出がある。家族で初詣に出掛けた日のこと。あま酒を飲もうと立ち寄った茶屋で祖母が意識を失い倒れ込んでしまった。当時、祖母は80歳をとうに過ぎていたが、身体は至って健康で、倒れる直前も1km近い道のりを軽快に歩いていた。突然のことでどうしたら良いかもわからず、僕は黙って祖母を介抱する母親を見守ることしかできなかった。

「おかあさん、おかあさん、しっかりして。いやだよ、こんなところで。」

異変を察して静まり返った店内に泣きそうな母親の声が響く。今でもそのときの光景は目に焼き付いている。たまたま店に居合わせた看護師が応援に駆け寄ってきてくれた。ああいう時の看護師ほど心強いものはない。祖母は相変わらず意識を失ったままだったが、冷静な処置を見ているうちに自分の気持ちが少しずつ落ちいてくるのがわかった。

やがて救急車が到着すると、祖母は担架に担ぎ込まれていった。当然ながら店の周りには大勢の人だかりができていて、恥ずかしくなかったと言えば嘘になる。だが、そんなことは気にもしていられなかった。それより気になるのは祖母の容態だ。1歳になったばかりの息子を連れていた僕と妻は実家へと一旦戻り、病院に付き添った両親から連絡を待つことになった。

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しばらくすると携帯の着信が鳴った。恐る恐る電話に出ると、父親から祖母は無事だと告げられた。普段あまり動かない祖母が長い距離を歩いたため、休んでいる間に血圧が急激に低下してしまい、失神を引き起こしたようである。健康な人をいつまでも預かっておけないと、一日だけ入院して病院からすぐに追い出されてしまった。以前に祖母が得意気に話していた言葉を思い出した。

「あなたのDNA は素晴らしい」

かかりつけの医師から、身体が健康なのは素晴らしいDNAのおかげだと言われたのが嬉しかったらしい。家族はみんな何度もその話を聞かされた。素晴らしいDNAを持つ祖母は退院後、何事もなかったように、今まで通りの生活に戻っていった。

✳︎

祖母は昔から甘い物が本当に好きな人だった。どのくらい甘いものが好きかと言うと、僕の実家ではおしるこやおはぎはオヤツではなく、れっきとした食事として扱われた。母親が嫁いだばかりに夕飯のテーブルに並べられたおしるこを見て、ずいぶん驚いたそうだ。しかし、郷に入れば郷に従うしかない。最初の頃は抵抗があったものの、いつしかその習慣が当たり前に感じるようになっていったらしい。子どもの頃からその習慣を受けてきた僕にとっては今まで何の違和感すら覚えることがなかった。すべての始まりは甘いものが大好きだった祖母にある。晩年はアンパンが主食と化していたようだが、そんな偏食でも身体は健康だった。人間の身体は不思議である。やはり素晴らしいDNAのおかげなのだろうか。ちょっと変わった祖母のことを今になって思い出した。

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話が逸れたので、あま酒に話を戻そう。あま酒は上述した通り、酒粕から作るものと米麹から作るものがある。特に米麹のあま酒は「飲む点滴」とも呼ばれ、近年は注目を集めてきた。アルコールを含まず、自然な甘味がある米麹のあま酒の方が最近は人気が高いように思われる。とは言え、酒粕のあま酒の方が劣っているという意味ではなく、味的に酒粕のあま酒の方が好きだという人も沢山いるだろう。

今更こんな話は常識で、誰もが知っていると言われてしまうかもしれないが、酒粕のあま酒と米麹のあま酒について改めて比較してみよう。有名な大関の酒粕甘酒とマルコメの米麹甘酒を見比べてみたい。

大関甘酒190g

マルコメ 米糀からつくった糀甘酒125ml

まずは大関の酒粕甘酒。

原材料名:砂糖(国内製造)、酒粕、澱粉、生姜、蜂蜜、食塩/酸味料

アルコール度数 1%未満(ノンアルコール)

次にマルコメの米麹甘酒。

原材料名: 甘酒(国内製造)(米、米こうじ、食塩)

アルコール0%

ところで原材料の見方はどのくらいの人にとって常識なのだろうか。原材料表示にはルールがあり、基本的なところでは原材料と添加物をスラッシュ(/)の前後で分け、重量の多いものから順番に記載する。また、国内で作られている加工食品に対しては、一番重量の大きい原材料の原産地を表示する義務になっている。

例えば、大関のあま酒には添加物として酸味料が使用されており、(国内で製造された)砂糖が一番多く含まれていることがわかる。そして、アルコールに関してはマルコメの0%に対して、大関はノンアルコールであるが、1%未満になっている。これは日本の酒税法でアルコール1%以上のものを酒類、アルコール1%未満のものをノンアルコールと規定しており、「ノンアルコール飲料」にはアルコール度数が0%のものと1%未満の両方が存在する。だから、子どもや、妊娠・授乳期の人、運転時やお酒に弱い人はアルコールゼロを選ぶのが望ましい。パッケージの裏面にある表示を見るだけで違いがよくわかるのだ。

ちなみにこのルールはたびたび見直されていて、最近変わったものも多い。食品会社に勤める僕にとっては常識であるが、一般で熟知している人は少ないんじゃないだろうか。業界の中にいる人にとっては当たり前でも、世間一般ではあまり知られていないみたいな情報は案外たくさんあって、それらの話を聞いてみると結構面白かったりする。

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さて、だいぶ長くなってしまったのでそろそろ終わりにしよう。最後に、今週のお題「あったか~い」。実は今回はこのお題にそって書いてみた。もちろん、とっくに終わったお題であることはわかっているけど、それほど気にはしていない。だって、本当のことを書いて「先週のお題」にしたら、「今週のお題」のコーナーにエントリーされないから。でも、大丈夫。なぜなら、みんなはきっとあったか〜い目で見てくれるはずだから。

 

おわり