はじまりここから

下手の横好きではじめたエッセイ風のブログです。平凡な日々の中で感じたことを少しだけエモく綴っています。ジャンルはニュースや音楽など。

現代人を悩みから解放してくれる『歴史思考』を読んでみた

「おっ、これはイイかも」久しぶりにKindle版ではなく、本を単行本で買いました。自分一人で読むのではなく、面白かったら小学生の子どもにも読ませたかったからです。でも、まさかの序盤で『セックス』という単語が出てくるとは…。面白かったのにも関わらず、見せるのを躊躇っています。はは(笑)。

さて、COTENという会社をご存知でしょうか。『歴史思考』は株式会社COTEN代表取締役の深井龍之介さんが書いた本です。初めて名前を聞く方も多いと思います。

COTEN

COTENがいったいどんな会社なのか?説明がちょっと難しいんですが、一言で言うと世界史のデータベースを開発している会社なんです。

より多くの人が自分と人のために考え行動している社会の実現を目指し、その手段として、メタ認知を高めるきっかけを提供すること。それがCOTENの掲げるビジョンとミッションです。(参照:株式会社COTEN)

「世界史のデータベース!?」「メタ認知!?」正直あんまりピンとこないと思います。僕も最初はサッパリでした。と言うか、ぶっちゃっけ今も正しく理解できている自信はありません。それでも、何となく理解できる頃にはCOTENにハマっていること間違いナシなんです。

リベラルアーツ

僕がCOTENを知ったのは、深井さんがメインMCを務めたNewsPicksの音声番組『a scope』を聴いていたのがきっかけです。

『a scope』は深井さんが色んな学問の研究者たちとリベラルアーツを通じて、私たちが生きる「この世界」を捉え直していくをテーマに対談する番組でした。

リベラルアーツを日本語に訳すと教養という意味です。深井さんにとってリベラルアーツは単に知識やスキルではなく、多くの観点を獲得するために必要なものであると説明しています。人生や社会をあらゆる角度から捉えるための視点や立ち位置、思考法こそがリベラルアーツなのだそうです。

(『a scope』でのお話を、ご本人の言葉をお借りしながら紹介させていただきます)

僕らは今、個人が自分の人生を主体的に考えなければ幸せになれない時代を生きています。それと同時に世界には様々な価値観を持つ人たちが共存していて、競争や打ち負かすことを考えるのではなく、互いの価値観を認めたり、新しい価値観を見つけたりしながら生きていかなくはなりません。

なぜなら、現代は人類史上、経験のない速さで社会の価値観が変化していて、同時に異なる価値観を持つ多く人たちと同じ世界で繋がっているからです。

社会の価値観と変化

社会の価値観が変わることは歴史上何度もありました。古代、中世、近代では社会の価値観が当然違ってきます。時に宗教改革のような大きな変化の波を経て現代に至るわけですが、現代ほど早いテンポで価値観が移り変わる時代は過去にありません。

例えば、多くの一般男性の場合、少し前までは大企業に入って出世することが理想的な生き方に考えられてきました。実際にそれで、ほとんどの人は幸せになれたのだと思います。

しかし、今はどうでしょう。もちろん、そのような考え方は今も残っていますが、そもそも働き方やお金に対する考え方が変わり、バリバリ働いて稼ぐことを美徳とする社会は既に失われつつあります。

中には早期リタイア(FIRE)を考える人やユーチューバーを目指す人も現れるようになりました。僕が就職した20年前には想像できなかったことです。

結婚観にしてみても、長い間、女性は結婚して子どもを産み、家庭に入ることが良しとされてきました。もし今、それを平然と言ったら白い目で見られるでしょう。

日本だけを見ても世代間で価値観に差が生じているわけですが、海外に目を向ければ、もっとたくさんの異なる価値観が存在しています。現代はそんな海外の人たちとも簡単に会話や仕事ができるようになりました。

さらに現代はインターネットを使って誰でも自由に自分の考えを発信することができます。人類の長い歴史の中では正しいことを言っても処刑されてきたわけですから、人類にとって、めちゃくちゃ大きな変化が今起きているわけです。

悩みやすい現代人

では、社会の価値観が移ろいやすかったり、同時に多様な価値観の人が存在したりする世界では何が起きるのでしょうか。

みんなが悩むようになります。なぜなら、自分にとって何が幸せなのかわからなくなるからです。

一定の価値観の中では、どうしたら幸せになれるかを考えるだけで十分です。でも、価値観が変わりやすい世界では、まず何が幸せなのかを考える必要があります。

先程の仕事観で言えば、以前は大企業に就職するための方法や、出世するための方法だけ考えていれば良かったわけですが、そもそも「それって本当の幸せじゃないよね」みたいな風になってきます。

つまり、どうしたら幸せになれるのか(How )よりも、何が幸せなのか(What)、なぜ幸せなのか(Why)の答えが求められる時代なのです。

大切なことは特定の価値観から一つの正解だけを求めないことです。正解が一つしかないと、自分が正解から外れたときに生きづらくなります。逆に複数の正解を見つけられれば、選択肢が増える分だけ迷いを減らすことができます。

そこで求められるのがリベラルアーツです。哲学、物理学、社会学、宗教学など、様々な学問の視点から人や社会を見ることで特定の価値観に縛られなくなります。そうした俯瞰的に多数の視点から認知できる状態がメタ認知なのです。

『a scope』の第1回目の放送にそんなお話があったのですが、全ての回を聞き終えてから、もう一度聞きなおしたときに話の内容が頭にスーッと入ってきました。まさに目から鱗が落ちた感じです。もっと正確に聞きたい方は、無料ですので、ぜひこちらを視聴してみてください。

newspicks.com

COTEN RADIO

さて、本のテーマである歴史ではなく、リベラルアーツについて長々書いてしまいましたが、関係ないかと言えば決してそんなことはありません。深井さんがどのような前提で『歴史思考』を書いているかをわかっていただくのにちょうど良いと思ったんです。実際、本ではエピローグの部分で教養について触れられています。

そもそも深井さんは『a scope』以前に歴史を面白く学ぶための『COTEN RADIO』をCOTTENから配信しています。

この『COTEN RADIO』はApple Podcast総合ランキングで長らく1位を取り続けるほど超人気コンテンツでして、『歴史思考』は『COTEN RADIO』初の著書なんです。

わざわざ『a scope』を先に紹介したのは、僕がまだ『COTEN RADIO』を聴いていなくて、この本をきっかけに聴くようになりたいと思っていることもあるんですが、『COTEN RADIO』が伝えようとしている歴史自体がリベラルアーツの一つであり、また、歴史からは他の多くのリベラルアーツも一緒に学ぶことができるからです。

リアルタイムに起きていることを正しく分析することは難しくても過去に起きた歴史であれば分析や考察が比較的しやすいのではないでしょうか。

新型コロナ感染をめぐる対応も現時点で何が正しいかを判断することは難しいですが、人々の価値観が分断されている状況を医療、心理、経済、文化、宗教など色んな学問の視点から見ることでわかるものはあると思うんです。

歴史は過去のケーススタディの集積であり、迷いがちな現代人にとってたくさんのヒントや答えを教えてくれます。

COTENがやろうとしている世界史のデータベースの事業は、例えば「大器晩成型の人物」や「今起きているニュースと似たような出来事」など抽象的なキーワードでの検索を可能にしたり、マップ上で出来事や人々がどう動いたかをわかるようにするためのプロジェクトです。

最後に

最後に少しだけ本の中身についても書いておきたいと思います。イエス・キリストやガンジーのような誰もが知っているような偉人の知られざるエピソードを紹介していて、僕らが抱いているイメージとのギャップが興味深いのですが、この本が伝えようとしていることも特定の価値観だけに縛られないように!ということなんです。

僕らは最近、SNSで活躍している人を見ると、つい自分がつまらない人間に思えてしまうことがあります。しかし、歴史に残るような偉人が必ずしも生前中に社会から称賛されたり、いわゆる成功を収めた人ばかりではなく、むしろ憂き目に遭っていたなんてことはザラだったりしました。同じように僕らも、何か大きなことを成し遂げていないからといって必要以上に自分の人生を悲観する必要はないのです。まだ気付けていないだけで、自分にも特別な価値が存在しているかもしれないのです。

僕らの悩みの原因の多くは社会の常識や価値観とのズレから起こります。歴史は僕らに、今の社会にある常識や価値観が決して当たり前ではないことを教えてくれます。

そして、自分と同じように悩んだ人は過去にもきっと存在していて、歴史からヒントや答えをもらうことができます。

偉人たちのエピソードはもちろん面白いのですが、面白さの先に隠れている大切なことを気付けたきたときに、この本がもっと有意義なものになるんじゃないでしょうか。

肝心な中身の紹介が短くてすいませんが、それは本を手にした時の楽しみに取っておいてください。僕も『COTEN RADIO』を聴くのを楽しみにしています。

 

おわり