はじまりここから

下手の横好きではじめたエッセイ風のブログです。平凡な日々の中で感じたことを少しだけエモく綴っています。ジャンルはニュースや音楽など。

誉田哲也の『武士道シックスティーン』をまた読みたくなって

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「剣道三倍段」という言葉を知っていますか。僕はずいぶん昔に上司から「無手の空手家や柔道家が武器を使う剣道家と互角の戦いを挑むには三倍の段位が必要なんだよ」と教えられました。当時、社内で定年退職する方がいて、その息子さんが警察官、しかも剣道の有段者であるという会話の中から飛び出した言葉だったと思います。

「剣道三倍段」の意味を改めて調べてみると、「武器術において、槍や薙刀を相手にするためには剣の技量が三倍(三倍の段に相当する実力)必要になる」が本来の意味だそうです。どうやら昭和の人気空手漫画「空手バカ一代」の作中にて、剣道初段と空手三段が互角だという意味で使われたことから、本来の意味とは異なる解釈が広まったようです。危うく僕も皆さんに間違った情報を伝えてしまうところでした(間違いというわけでもないんでしょうが)。

話は変わりまして、過去または現在、あなたにはライバルと呼べる存在がいますか。趣味でも仕事でも恋愛でも何でも構わないんですが、自分とはタイプが異なるライバルほど強く意識してしまうものではないでしょうか。自分にはない能力や長所を多く持っている相手ほど、その魅力を妬ましく思ってしまうことがあります。

なぜ突然こんな話をし始めたかというと、きっかけは先日読んだこのニュースです。

news.yahoo.co.jp

学生時代は剣道のスーパーエリートだった星子選手。昨秋、警察官の採用試験に落ちてしまい、大きな挫折を味わいます。しかし、そこから一念発起し、今年に開かれた全日本選手権では現役の警察官勢を退け、剣道日本一の栄冠に輝いたのでした。

大人になった僕は剣道ができる人に「カッコイイ」といった憧れの感情を抱きます。面を外してピシッと正座している姿なんかを見ると、ますます「シブイなぁ」と思ってしまいます。ですが、そもそも剣道とはまったく無縁で、子どもの頃は剣道をやっている友人に「防具がクセェ」など言って馬鹿にもしていました。それが、ある一冊の本との出会いから剣道の見方が変わったんです。

さて、前置きが長くなりましたが、今回は本を紹介したいのです。本のタイトルは「武士道シックスティーン」。

武士道シックスティーン

最近の作品でもないので知っている方は多いかもしれません。本をあまり読まない僕なので、その辺は大目に見てもらえれば幸いです。

作者は誉田哲也さん。竹内結子さん主演ドラマ「ストロベリーナイト」から誉田作品に興味を持ち始め、気付くと「国境事変」や「月光」などの小説を読み漁っていました。流れで手に取った一冊が「武士道シックスティーン」です。

ドロドロした事件の多い推理小説から一転して、爽やかな青春小説だったのですが、さすが誉田先生です。読み易いし、面白い。すぐ好きになりました。

「武士道シックスティーン」はシリーズもので、のちに「武士道セブンティーン」、「武士道エイティーン」、さらには「武士道ジェネレーション」へと続いていきます。

実は紹介しておいて何ですが、僕はまだ「武士道セブンティーン」までしか読んでいません。小説を定期的に読んでいた頃はなるべく安く済ませるために古本を購入していたのですが、どうしても「武士道エイティーン」の古本を見つけ出せず、そのまま読むのを断念してしまいました。

今となっては「武士道セブンティーン」までの細かな部分を覚えていないため、ケチらずに新品を購入しておけば良かったと後悔しています。

あらすじと感想

文藝春秋のオフィシャルサイトよりあらすじを引用させていただきます。何せ読んだのが10年近い前でして、楽してスイマセン。

日本舞踊をやめ、中学から剣道を始めた西荻早苗。重心を下にした柔らかい動きでみるみる成長するが、楽しさを求め「勝敗」については固執しない性格。一方、三歳から剣道を始め、パワー、スピード、勝負勘のすべてに秀で、勝敗がすべての剣道エリートでしかも武蔵オタク(愛読書は『五輪書』と『武士道』)の磯山香織。深い意味はなく出た中学最後の区民大会個人戦で、香織はなぜか早苗に負けてしまう。そんな二人が高校で一緒になった。

敗れた悔しさを片時も忘れたことのない香織だったが、早苗がそのときの相手だとは気付かない。というのも、早苗の苗字が両親の離婚によって「甲本」から「西荻」に変わっていたため、胴着の垂れ幕の名前が違っていたのだ。部活で香織は先輩を次々と撃破。早苗は香織の無類の強さに驚き、香織は早苗の構えをみて自分を破った相手だと気付く。それ以降、香織は早苗は目の仇にして練習。香織の猛攻と練習態度に辟易した早苗は部活を辞めることを考える。関東大会団体戦を前に香織は早苗の剣道を「チャンバラダンス」と揶揄。口論になった二人だったが、その最中に香織が捻挫。片腕でも試合に出場したのだが……。

全く価値観の違う二人が、剣道を通し深く繋がっていく。

『武士道シックスティーン』:誉田哲也 | 特設サイトより

まとめをすると、上述の最後の一文に尽きます。

性格も、性質も違う。十代の多感な女子二人が反発と共感を繰り返しながら、剣道を通して絆を深めていく物語です。剣道と女子高生という意外に思える組み合わせも、清廉で凛とした剣道のイメージが穢れを知らない女性の美しさと絶妙にマッチしています。

先の東京オリンピックで水泳の萩野公介選手が、涙ながらに「瀬戸大也選手と一緒にまた泳げるなんて、神様がくれた贈り物としか思えない」と応えていたインタビューが印象的でした。

良きライバルとして互いに切磋琢磨し続けた二人の関係は、どこにでもある平凡な友情より熱い絆で結ばれているのかもしれませんね。

✳︎

そう言えば、「武士道シックスティーン」は映画化もされていました。二人を演じたのは鳴海璃子さんと北乃きいさんです。

映画の前には漫画化もされていたようです。

だいぶ遠回しな紹介になってしまいましたが、「武士道シックスティーン」に興味を持っていただけましたでしょうか。僕も自分で書きながら続きをまた読みたくなってきました。

時には爽やかな青春小説に触れて、若かった頃の過去の自分に思いを馳せてみるのも有意義ではないでしょうか。「武士道シックスティーン」。今さらながらおススメです。

 

おわり