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下手の横好きではじめたエッセイ風のブログです。平凡な日々の中で感じたことを少しだけエモく綴っています。ジャンルはニュースや音楽など。

マウントを取られやすい電話を若者は嫌う

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先日ラジオを聴いてると「やっぱりそうなんだな」と納得した。ラジオで話していたのは人が感じる孤独について。

どうやら日本人は世界的に見ても孤独感が高いらしい。他者からの評価を気にしやすい性質がゆえに他者とのつながりが少ないからだそうだ。

特に20代後半から30歳までが孤独を感じやすい。社会の中で人との関係性を深めていく時期のため、上手くいけば親密性を築きやすい反面、上手くいかないと孤独に陥りやすい。

18歳以上の1万人を対象にした調査では5.1%がリスクのある孤独状態に該当する恐れがあるという結果も出ていた。実は日本はイギリスに続き、世界で2番目に孤独・孤立対策担当大臣を任命し、孤独対策に本腰を入れている。

ただ、相談にためらいを感じる人は多い。孤独や寂しさを人に明かすのは恥ずかしいという固定概念があるからだ。しかも、若者は電話に対する抵抗が強く、電話相談自体のハードルが高いとされる。最近は24時間チャットで対応してくれるサービスも増えているそうだ。 

なお、僕が「やっぱりそうなんだな」と納得したのは孤独に関する部分じゃない。若者は電話に対する抵抗が強いという部分だ。

コミュニケーションツールの違い

若者が電話を敬遠しがちなのは仕事をしているとわかりやすい。世代によって好むコミュニケーションツールの違いが背景にあるように思う。

ざっくりとした分け方になるが、オールド世代は電話、ミドル世代はメール、ヤング世代はチャット。乱暴に言ってしまえば、年寄りはすぐに言葉で伝えようとして、若者はとりあえず文字で伝えようとする。年寄りにとっていちいち文字を起こすのは煩わしいが、若者からすればむやみに話しかけられることの方が煩わしい。書くことが得意なブロガーには多少違和感があるかもしれないが、世間一般にはこんなイメージがある。

少し前に僕の会社で全社員に携帯が支給されることが決まった。今までは営業と管理職だけに限定されていたが、今後は誰でも一人一台を持つことになる。

生産性が求められる時代。無駄な電話の取り次ぎを無くすことが目的で直通ラインが用意される。事務所に掛かってきた電話を取るのは暗黙のルールで若手社員の務め。不公平な役割分担が無くなって喜ぶだけかと思えば、そんなに単純な話でもないらしい。望んでもいないアポインを入れてこようとする業者やネチっこく問い詰めてくる関係部署の上司。彼らから気軽に電話される機会が増えることを憂いていた。

電話は相手の時間を奪う

気持ちはわからなくもない。自分自身、少し前まで携帯に直接掛けられるのがあまり好きではなかった。電話は掛ける側が要件を速やかに伝えるのには便利な手段だけど、受ける側にとってはかえって迷惑なときもある。話の中身も重要だが、掛けるタイミングも重要だからだ。難しい仕事をしているときに電話が鳴ると集中力がプツンと切れる。今取り組んでいる以外の案件を振られるのは話が散らかるからやめてほしい。得てして、メールやチャットに比べると電話は強制的に相手の時間を奪いやすい。

一年程前にMicrosoftの日本法人の見学ツアーに参加させてもらった。そのときにコンダクターから教わったことが印象深い。

電話を掛けるか否かは、用件を今すぐに伝えることが相手にとってメリットになるかどうかで決める

つまり、自分の都合だけで電話はしない。このポリシーはすごく参考になった。

コロナ禍でリモートワークも当たり前になり、チャットを使用する機会は増えた。オールド世代には物足りなく感じる人も少なくないだろう。僕のようなミドル世代もメールで送ったことをわざわざ電話でも伝えようとするときがある。メールの見落としがないよう、良かれと思ってしている行為だが、ヤング世代にとってはそれすらもナンセンスらしい。気を付けねば。

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電話はマウントを取られやすい

若者が電話を好まないのには他にも理由が考えられる。それは相手にマウントを取られやすいからじゃないだろうか。たまに文章の方がキツいときもあるが、受話器越しから相手の怒声を聞くよりもメールやチャットで注意を受ける方が気分的にずっと楽だ。時間差ができる分、距離感が生まれる。すぐに適切な返しをしなくても許される。

これは若者に限った話ではない。僕も同僚や自分が客の立場になる相手なら気軽に電話を掛けても、役員などの立場が離れた上司や、怖い客を相手にできる限り電話は掛けたくない。マウントを取られるリスクが高いからだ。

ただ、若者に比べれば、昔から電話を使うことに慣れてはいるし、学生時代から遠慮なく生徒に指導する教師や後輩に理不尽なことを平気で言う先輩と接する機会も多かった。育ってきた時代環境の違いは多いにあると思う。

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我々は孤独だ。だが、一人ではない

少し意地悪な言い方をすれば若者にとってはチャットの方がマウントを取りやすいという見方もできる。LINEによるイジメなんかは昔にはなかったやり方だ。一人にしか繋がらない電話よりも、複数に同時に繋がるチャットの方が誰かを孤立させるには便利な道具になり得る。

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最初のラジオの話に戻したい。ラジオでは歌手の大森靖子さんの言葉を紹介していた。

あなたはあなたの孤独を消してくれる人を探しているんじゃなくて、あなたの孤独を愛して抱きしめてくれている人を探しているじゃないんですか。私の孤独ちゃんはあなたの孤独ちゃんにとても会いたがっています

孤独と孤立は違う。孤立はつらいが、みんながお互いの孤独を尊んで生きてける世の中になってほしいと訴える。

良くも悪くも今は孤独を認めて生きていかなくてはならない環境にある。孤独を否定していては上手く生きていけない時代なのだろう。最後に宇宙兄弟の名言で終わりたい。

We are lonlely, but not alone.

 

alu.jp

 

電話はときに寂しい気持ちを紛らわせてくれる道具であることも忘れてはならない気がする。

 

おわり