はじまりここから

下手の横好きではじめたエッセイ風のブログです。平凡な日々の中で感じたことを少しだけエモく綴っています。ジャンルはニュースや音楽など。

授業参観と子どもの個性(前編)

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小学3年の息子の授業参観に行ってきた。小学校の授業参観に行くのは今回で2回目。コロナ禍での授業参観は参観に来る親を2つのグループに分けて行われた。参観できる時間は約20分。わずか20分であれば"休まないと職場を離れられない私より在宅で仕事ができるあなたが行くべき"と、忙しくパートと家事をこなす妻から指名を受けた。しかも僕に相談するよりも前に息子に話をしていたらしい。「久しぶりに父が来てくれるって喜んでたよ」先に外堀を埋められていることを理解した。まぁ、いい。子どものイベントに参加することは嫌いじゃないし、2年前の1回目よりは気が楽だ

車では行けないので、ママチャリで行くことにした。久しぶりに乗る自転車は満更でもない。学校の近くまでくると集団で歩く親の列が見えてきた。これ見よがしに颯爽と追い越してみせる。予想通り母親が多かったが別に気にはしない。

学校に着くと下駄箱のところで教師が仁王立ちして何かを叫んでいる。少し高圧的な雰囲気が鼻につく。近くに寄ると「ソーシャルディスタンスを取ってください」と繰り返し唱えていることがわかった。

ソーシャルディスタンス、ソーシャルディスタンスって、長くて噛みそうになっているし、意味は知ってるけど、「社会的距離って何だよっ」てツッコみたくなる。そこはもう「かたまって歩かないでください」とか、「しゃべらず進んでください」とかで良いんじゃねぇ、と思わずにはいられない。杓子定規なところが何とも学校らくしはあるのだが。

教室に着くとすぐに息子を見つけた。息子もこちらに気付いた様子だった。とりあえず、教室の後ろの空いたスペースに自分の居場所を陣取る。早速、教壇の方に目をやると先生の真ん前に座るひときわ態度のでかい生徒が目に付いた。

良く言えばヤンチャで元気がありそな子。悪く言えば生意気そうなクソガキ。できることなら広い心の大人でいたいが、そうもいかない。自分の子に危害を加える輩は子どもとは言え容赦しない。

僕が授業参観に参加した1回目は息子が小学1年生のときのこと。友達とコミュニケーションを取るのが下手な息子が学校で苦労しているのは明らかだった。

小学校に入る直前に家を引っ越しをしたたため、息子は周りにまったく友達がいない環境で小学校生活をスタートさせた。元々ハンディのある子に更にハンディを負わせるようなもの。親としては後ろめたかった。

幼稚園のころは教育に力を入れた私立幼稚園に通わせていたせいか、乱暴な子は比較的少なかった。小学校はごく普通の公立の学校で、まわりの学校と比べても評判は悪い。一転して乱暴な子の割合が高くなった。

私立と公立を偏見で分けるつもりはないし、乱暴な子を悪と決めつけるつもりはない。ただ、授業中に教室の中をフラフラ自由に動きまわるような生徒を躾けることもできない現代の学校には幻滅を通り越して同情したくもなる。担任の先生は小一の生徒に早くも匙を投げていたことにすぐ気付いた。

運動会などのイベントに行くと、案の定、息子は一人でポツンと座っていた。先入観で見ないよう注意したが、どうしても寂しい少年にしか見えない。まわりの子たちがキャッキャッじゃれているそばで堅い表情のまま、遠くの方を一点見つめている。どんな気持ちでいたのだろう。

いじめと呼ぶほどひどい仕打ちを受けていたわけではない。みんなから寄ってたかって何かされていたわけではない。特定の子からクーピーをバキバキに折られたり、体操着のズボンにじゃりを入れられたり。それだけのこと。責任は持つから、やられたらやり返せと言ったが、それは間違っていると怒られた。

やられるのは息子だけではなかったそうだが、息子はやられる頻度が多いということらしい。ただ、一度だけ眉間の部分を教材で傷をつけられて帰ってきたことがあった。息子から事情を聴くと明らかにわざとやられた傷だった。連絡帳のようなもので担任に事実を伝えると、翌日すぐに相手の子の母親から電話がかかってきた。「謝りに家に行っていいですか?」と言われたので、そこまでする必要はないと答えた。すると声でホッとしたのがわかった。所詮は社交辞令の発言だろうし、わざわざ来てもらうのも面倒だ。たぶん息子もそんなことは望まない。しかし、相手は油断したのか「わざとじゃないけど偶然当たってしまったみたいで…」と言い放ち、こっちは一気に怒りモードになる。

「どう考えて偶然じゃないことぐらいわかるだろ。てめぇのバカ息子に確認してみろ」と喉元まで出かかったが、ギリギリのところで我慢した。妻に電話がかかってきたことと、謝罪にくるのを断ったことを伝えるとそれで良いと言われた。次の日に息子がその子からもらった謝罪文の書いた手紙を見せてもらった。特に何とも思わなかった。

学校に通うときは妻か僕が見送ることにしている。当時の足取りはいつも重そうだった。実際、その頃の息子はとても元気がなかった。たまにしか会わない実家の親も、そんな息子の様子を察して心配そうにしていた。めちゃくちゃしんどかっただろう。でも、学校に行きたくないとだけは言わなかった。

そこで学校での様子を自分の目で確かめるため、そしてこちらの心配を気にも止めてくれない担任に無言の圧をかけるため、父親である自分が授業参観に行くことにした。それが1回目の授業参観である。ただの親バカである。

あれから約2年。以前よりはだいぶ学校生活に慣れたらしく、家で学校の話を多くするようになった。ドッチボールをして遊んだことや、給食を友達より早く食べ終えた話とか。大した話ではないが、それが良い。妻が学童保育に迎えにいくと、友達と一緒に将棋などをして遊んでいることも増えたようだ。

さて、2回目の授業参観。1年生の時とどれぐらい変わっただろうか。

 

後編に続けます。