「被災者、被災地は素材ですか?」の話を聞いて僕が感じたこと
今回の記事もラジオの話が元ネタですが、今まさにたくさんの人に聞いてほしいと思えるお話です。はてなブロガーの皆さんに少しでもシェアできればと思います。
TOKYO FM「ONE MORNING」×Buzz Feed Japan
僕が聞いたのはTOKYO FM「ONE MORNING」の"震災から10年をテーマに東日本大震災を様々な角度から掘り下げる"という企画の中のお話でした。コメンテーターはBuzz Feed Japan副編集長の神庭亮介さんです。
(お話の内容を要約しながら紹介させていただきます。)
メディアのカレンダー報道と私たちのカレンダー意識
メディアの人間がやりがちなのが事件や災害などが起きてしまったときに「あれかれ〇年…」のような節目に合わせてワーッと一斉に報道することで、そのような報道をカレンダー報道と呼ぶそうです。
節目に合わせて報道すること自体が悪いわけではありませんが、手段と目的が逆転してしまい、なにがなんでも情報を集めろとか、とにかく何でも報じれば良しとなってしてしまうのは問題ですよね。
Buzz Feed Japanが昨年掲載した記事の中に『僕たちは単なる「素材」ですか? もう悲しい物語に足を引っ張られたくはない』というタイトルの記事がありました。
女川の老舗企業「蒲鉾本舗高政」の4代目社長・高橋正樹さんを取材したものです。
取材のきっかけは2019年に高橋さんが投稿したあるツイートのでした。
「被災者、被災地は素材ですか?」
メディアの報道姿勢に疑問を投げかけた投稿が1万7千回以上もリツイートされ、話題になったようです。
インタビューで高橋さんの口から語られたのは、メディア報道における震災を忘れないための手段と目的が逆転化してしまっていることへの指摘でした。
3.11が近づくたび被災地に殺到するメディア。しかし、何かないか?とネタの提供を求めたり、一生懸命答えた部分をほとんど使わなかったり、不信感を与えるメディアの対応は珍しくなかったようです。
365日毎日考え続けることは難しい問題です。節目に報道を見て考えるのは悪いことではありません。それでも、364日は忘れていて1日だけ思い出すのでは意味がないんです。
特に注意すべきはメディアがストーリーを作ってしまうところです。ストーリーを描くために悲劇の被災者を求めてしまうのです。
「女川はこれだけ明るく楽しい街に戻ってきているのに、なぜ1年に1回必要以上に悲しい場所に引き戻されなくちゃいけないのか。10年目に報道される内容が悲しいストーリーばかりだけじゃないことを期待します。」
そう高橋さんが訴えていらっしゃったのが、メディア側にいる神庭さんの胸には刺さったようでした。
パーソナリティの鈴村さんは被災地には前向きに元気な場所もあれば、復興で進んでいない場所もある。現地を訪れた人間が素直に事実を伝えることが大切と話します。
感情を入れるとつい悲劇の物語を組み立ててしまう。テレビもラジオも短い時間で報道しようとすると行き過ぎた物語に編集しがちになる。ありのまま伝えるのは難しいけど、悲劇ではなく、今立ち直ろうとするところに同じ目線で向き合い、フラットな目線に立てるようなきっかけを作ることが大事。
僕が聴いたラジオはそんなお話でした。
こちらは高橋さんを取材されたBuzz Feed Japanの記事です。
所感
いかがでしたでしょうか。
ここ最近は東日本大震災の10年目を節目とするカレンダー報道をよく見かけます。明日は特に多く報道されることだと思います。
今回ご紹介した話を知っていれば、どの報道が本当に意味のある報道なのかわかるかもしれません。
以前、他の記事で書きましたが、僕は仕事で福島県に出張することがよくあります。震災の直前にも行っていましたし、震災当日に僕の上司は現地にいました。
幸いにも関係者や建物は無事でしたが、長く彼らを苦しめたのは風評被害でした。彼らを救ったのは悲しい物語ではなく、震災以前と変わらないことを理解してもらうことでした。
被災地によって今何を伝えるべきかは異なります。過去の悲しい物語に仕立てるのではなく、今の現状をありのままに伝えること、そして何よりも未来を考えることが大切だということです。
そのことを教えてくれたお話でした。
おまけ
ラジオでは3月9日にちなんでレミオロメンの『3月9日』が流れていました。
僕がよくやる音楽の動画貼りですが、今回はこちらの曲をチョイスしました。
『満月の夕べ』
ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬さんとヒートウェイヴの山口洋さんご共作した楽曲です。
阪神・淡路大震災曲の惨状、復興への厳しい現実、それらに向き合おうとする被災地の人々の姿が歌い込まれている曲で、多くのミュージシャンにカバーされています。
真面目な話に終始しましたが、はてなブロガーのみなさんが僕と同じように何か感じてくれることに期待しています。
おわり