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下手の横好きではじめたエッセイ風のブログです。平凡な日々の中で感じたことを少しだけエモく綴っています。ジャンルはニュースや音楽など。

父親と2人で行った大学受験の旅の思い出

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今週のお題「試験の思い出」。

1998年。本番にめっぽう弱い私はセンター試験が散々な結果に終わり、それでも学費が安い国立大学への進学を諦めるわけにはいかず、悩んだ末にまったく候補に挙がってなかった茨城大学を受験することに決めた。

二次試験の会場になったのは茨城大学の水戸キャンパス。自宅からの距離を考えると前泊が必要になる。普段はものぐさな父が珍しく、甘ったれな私のために仕事を休んで付き添ってくれることになった。東京までは新幹線、上野からは特急に乗り換えて移動する。途中、窓の外には驚くほど広い田んぼが目に入ってきて「この景色をまた眺めることになるかもしれない」と、そんな思いを抱きつつ電車に長く揺られていた。

今振り返ると一つ気になることがある。インターネットが普及していなかった時代に父親はどうやって宿をチョイスしたのだろうか。普通のことではあるが、スマホでちょちょいと予約するのに慣れてしまうと、ほんの少し昔のやり方がずいぶんアナログなやり方に感じてしまう。

自営業のため、サラリーマンでもない父親がどんな風に宿を見つけたのか、ちょっと想像がつかない。やはりタウンページとか雑誌の類に頼ったのだろうか。

と言うのも、予約した宿は水戸駅周辺のビジネスホテルではなく、なぜか水戸市を少し通り過ぎた東海村にあるビジネス旅館だった。

JCOが東海村の原発で臨界事故を起こしてニュースになったのは1999年。私が泊まった翌年の出来事だ。当時高校生の私が東海村の名前を知る由もなく、反対にその名前が強く印象に残った。

旅館に宿泊していた人の中に私と同じような受験生はいなかった。スーツ姿のサラリーマンもいない。いわゆるガテン系の肉体労働者の方が多く、男臭い雰囲気のなかで夕食を食べた記憶がある。たしか、つみれの入った水炊きの鍋だった。皿の上に並べられたつみれを自分たちで鍋の中に入れて食べた記憶がある。

食事と風呂を終え、部屋に戻るとフジテレビで放送していた月9ドラマ「Days」を見た。言い訳だが、2次試験は小論文形式でだったこともあり、もはや焦って勉強する気はなかった。本当はセンター試験が終わり、単に集中力を切らしていただけなのだけど。

Daysは地方から上京した20歳の6人の物語。出演は長瀬智也、金子賢、小橋賢児、菅野美穂、中谷美紀、MIKI。あぁ、懐かしい。若者たちが大人や社会の壁にぶつかって葛藤する様子を描いた全般的にやや暗めな印象の作品。美大を目指していた小橋賢児が事故で死んでしまうときの悲しいシーンが思い出される。主題歌に使われていた奥田民生の『さすらい』が好きだった。

そして、肝心な試験当日のことはあまり覚えていない。とにかく試験は全然ダメだった。そりゃあ、ダメだよね。前日の夜にドラマ見てるんだもん。同じように何校か受験したから記憶がごっちゃまぜで、どれが茨城大学だったのかを思い出せない。

結局、試験に落ち、茨城大学に入学することはなかった。電車から見た広大な田んぼを見る理由も消えた。最終的に地元で受験した私立大学に進むことになったのを考えると、父親には余計な負担をかけてしまった。

それでも勝手なことを言わせてもらえば、父親と2人で遠くに出かけたことはいい思い出だ。父親と二人きりで外泊したのは、今のところその時の一度限り。たぶん東海村に泊まる機会も二度とないだろう。自分ではチョイスしそうにないビジネス旅館も味があって楽しかった。写真もお土産も何も残っていない、ちょっと変わった父と私の大学受験の旅。

人生とはさすらいだ。

さすらいの 道の途中で
会いたくなったらうたうよ 昔の歌を

作詞:奥田民生

 


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おわり